大平山を望むデッキテラス — 坂茂設計「家具の家 No.1」(山中湖)

家具が、
家を支える。

1995年、森の中のケーススタディハウス

何もしない時間が、こんなに心地よいと感じたのは、いつ以来だろう。

大きな窓から差し込む朝日。風が抜けるテラス。森に囲まれたお風呂。
この家では、ただ過ごすだけで、からだの奥からゆっくりと力が抜けていきます。

この建物は、家具が柱を兼ねて、家そのものを支えている。
家具で空間が仕切られているから、風と光が自由に行き交い、どこにいても開放感がある。

気がつけば、いつもより深く眠り、いつもより早く目が覚める。
そんな時間の流れ方を、少しだけのぞいてみてください。

風の通う家
構造体としての家具

私たちの「家具の家 No.1」との出会いは、2023年の夏のことでした。森の中にひっそりと佇むその空間に、私たちは自然と引き寄せられました。初めて足を踏み入れたとき、目に飛び込んできたのは、整然と並ぶユニット家具と、その上に軽やかに載る屋根。家具がそのまま家を支えている——それは建築というより、空間に浮かぶ「構造そのもの」のようでした。

この家は1990年代に設計されました。設計者は、後に世界的に活躍する建築家として知られる人物です。この建物を特徴づけるのは、家具ユニットがそのまま構造体となっていること。家具は屋根を支え、壁となり、空間を仕切っています。

この家が建つ別荘地は、かつて日本を代表するクリエイターたちが自らの居場所を設けて別荘を建てた場所でしたが、老朽化により徐々にその姿を消そうとしています。そんな中、この建築家によって設計された3棟のうち、2棟は老朽化で取り壊されてしまいました。

「家具の家 No.1」も、修復を必要としていました。湿度の高い環境が、長年にわたり基礎部分に影響を及ぼしていたのです。2024年の冬、私たちは、屋根と家具の構造体を残したまま、腐食が進んだ基礎と床をすべて入れ替えるという修復作業を行いました。家具が宙に浮いたまま床を解体した姿は、この家の構造を体現するようでもありました。

実際にこの家で時間を過ごしてみると、空気の流れや光の移ろい、そして音の吸い込み方までが、家具によって誘われていることに気づかされます。内と外の境界は限りなくゆるやかで、風は自由に通り抜け、建築は静かに呼吸しているように感じられます。

人が使い、風が動き、建築が呼吸する——そんな体験に、私たちは心を奪われました。ただ眺めるだけでなく、実際に泊まり、静かな時間の流れのなかで、構造体としての家具に囲まれる不思議な感覚を、多くの人に体験してもらいただきたい。そうすればこの家は、腐ちることなく、これからも長く息づいていくことでしょう。

家具の家No.1 運営委員会

家具の家 No.1 アクソノメトリック図 — 家具ユニットが構造体として機能する坂茂の設計

家具が構造体として機能する

家具を残したまま基礎と床を修繕する改修工程 — 家具の家 No.1

家具を残した基礎と床の修繕課程

施設情報

用途保養所
竣工1995年
構造木造平屋
面積約100㎡
間取リビングキッチン、お風呂トイレ、和室、洋室

ご滞在のご案内

宿泊定員は何名ですか?
2LDK(和室・洋室)で最大6名までご宿泊いただけます。
チェックインとチェックアウトの時刻は?
チェックインは14:00以降、チェックアウトは11:00までです。
Wi-Fiはありますか?
無料Wi-Fiをご利用いただけます。
駐車場はありますか?
敷地内に駐車スペースがございます。
エアコンはありますか?
エアコンは設置していません。山中湖の標高と森の風で、自然の空気をそのまま感じていただける設計です。
BBQはできますか?
デッキテラスでBBQをお楽しみいただけます。
喫煙はできますか?
建物保全のため、屋内・屋外ともに全面禁煙です。
アクセスは?
都心から車で約2時間です。詳細な道順はご予約確定後にご案内いたします。
キャンセルポリシーは?
ご利用日の3日前までは無料でキャンセルいただけます。2日前から当日のキャンセルは100%のキャンセル料が発生します。
この家は、本棚やクローゼットといった家具ユニットが、柱と壁の代わりに屋根を支えています。

1995年、建築家・坂茂が山中湖に建てた住宅実験「家具の家 No.1」。同年の阪神・淡路大震災——坂茂は壊れず残った家具を見て、「家具には、構造体になる力がある」と確信しました。

工場でつくった家具を現場で組み上げる。坂茂の住宅実験シリーズ、最初の1作です。

床下の老朽化が進み、2024年に修復。

📷 photo by @Martin_HOLTKAMP
📍「家具の家no.1」山中湖・1日1組
🏠 予約はこちら furniturehouse1.com

この家は、本棚やクローゼットといった家具ユニットが、柱と壁の代わりに屋根を支えています。 1995年、建築家・坂茂が山中湖に建てた住宅実験「家具の家 No.1」。同年の阪神・淡路大震災——坂茂は壊れず残った家具を見て、「家具には、構造体になる力がある」と確信しました。 工場でつくった家具を現場で組み上げる。坂茂の住宅実験シリーズ、最初の1作です。 床下の老朽化が進み、2024年に修復。 📷 photo by @Martin_HOLTKAMP 📍「家具の家no.1」山中湖・1日1組 🏠 予約はこちら furniturehouse1.com

和室を囲う4つの壁のうち、向かい合う2辺は、周囲の森に開けたガラス面と、廊下を仕切る障子。残りの2辺は家具ユニットが壁柱の役割を担います。
夜、ガラス面の遮光カーテンと障子で寝室に。
朝、それらを全開にすると、廊下から森に向かう視線が部屋を貫きます。
📍坂茂の初期作品「家具の家no.1」1日1組
🏠 宿泊予約 furniturehouse1.com

📷 photo by @Martin_HOLTKAMP (3枚目のみ)

和室を囲う4つの壁のうち、向かい合う2辺は、周囲の森に開けたガラス面と、廊下を仕切る障子。残りの2辺は家具ユニットが壁柱の役割を担います。 夜、ガラス面の遮光カーテンと障子で寝室に。 朝、それらを全開にすると、廊下から森に向かう視線が部屋を貫きます。 📍坂茂の初期作品「家具の家no.1」1日1組 🏠 宿泊予約 furniturehouse1.com 📷 photo by @Martin_HOLTKAMP (3枚目のみ)

この敷地と周辺の木で、ゲスト用の器をつくってもらいました。
カトラリー作家 @smallpond.am の手で、スプーンに、大皿に。
そして今週、フォークとボールも追加されました。

土地の木が、器になって食卓に戻ってくる。
滞在中、その手触りをぜひ確かめてみてください。

▶︎ 製作の様子は @smallpond.am の投稿でご覧いただけます。

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この敷地と周辺の木で、ゲスト用の器をつくってもらいました。 カトラリー作家 @smallpond.am の手で、スプーンに、大皿に。 そして今週、フォークとボールも追加されました。 土地の木が、器になって食卓に戻ってくる。 滞在中、その手触りをぜひ確かめてみてください。 ▶︎ 製作の様子は @smallpond.am の投稿でご覧いただけます。 .am

坂茂氏の初期の代表作「紙の家 - Paper House」は、数年前まで家具の家 no.1の隣にありました。(写真手前の空き地)

「紙の家」とは、直径280mm・厚さ15mm・長さ2.7mの巨大な再生紙の紙管110本がS字型に配置された住宅です。そのうち屋根の重さを支えているのはわずか10本。残り80本は地震や風に耐え、その他は空間を仕切るスクリーンとして機能していました。

数々の強度実験や耐久テストをクリアし、当時の建設大臣(現・国土交通大臣)から、永久的な建築物の構造材として正式に認定を受けました。建築基準法第38条による特殊な材料の大臣認定制度に基づくもので、日本で初めて「紙」が建材として公に認められた瞬間です。

坂茂氏はこの「紙の家」で得た法的認定と建築の知見を活かし、同年に発生した阪神・淡路大震災で、被災者のための「紙のログハウス」や「紙の教会」を建設。この技術は、現在も世界中の災害支援シェルターや仮設住宅に引き継がれています。

紙の家
https://shigerubanarchitects.com/ja/works/hh-ja/paper-house/

紙の家、近くには「ダブルルーフの家」もありましたが、現在は、家具の家のみ現存しています。一方、2023年開館の下瀬美術館内の「Simose Art Garden Villa」で、全棟が復活しました。

🏠 宿泊予約 furniturehouse1.com
📍坂茂の初期作品「家具の家no.1」1日1組

Shigeru Ban's early masterpiece "Paper House" stood next to Furniture House No.1 until just a few years ago. (You can see the empty lot in the foreground of this photo.)

Paper House was built with 110 massive recycled paper tubes—each 280mm in diameter, 15mm thick, and 2.7m long—arranged in an S-shape. Of these, only 10 support the weight of the roof. Another 80 resist seismic and wind loads, while the rest serve as screens to divide the interior space.

After passing extensive strength and durability tests, the structure was officially certified by Japan's Minister of Construction (now the Minister of Land, Infrastructure, Transport and Tourism) as a permanent structural material. Issued under the special materials certification system of Article 38 of the Building Standards Act, this was the moment when "paper" was first publicly recognized as a building material in Japan.

Drawing on the legal certification and architectural insights gained through Paper House, Shigeru Ban built Paper Log Houses and the Paper Church for survivors of the Great Hanshin-Awaji Earthquake that struck the same year. This technology continues to be applied in disaster relief shelters and temporary housing around the world today.

Paper House
https://shigerubanarchitects.com/works/hh/paper-house/

Paper House and the nearby "House of Double-Roof" no longer stand—Furniture House No.1 is the only one of these early works that remains in its original

📷 photo by @Martin_HOLTKAMP

坂茂氏の初期の代表作「紙の家 - Paper House」は、数年前まで家具の家 no.1の隣にありました。(写真手前の空き地) 「紙の家」とは、直径280mm・厚さ15mm・長さ2.7mの巨大な再生紙の紙管110本がS字型に配置された住宅です。そのうち屋根の重さを支えているのはわずか10本。残り80本は地震や風に耐え、その他は空間を仕切るスクリーンとして機能していました。 数々の強度実験や耐久テストをクリアし、当時の建設大臣(現・国土交通大臣)から、永久的な建築物の構造材として正式に認定を受けました。建築基準法第38条による特殊な材料の大臣認定制度に基づくもので、日本で初めて「紙」が建材として公に認められた瞬間です。 坂茂氏はこの「紙の家」で得た法的認定と建築の知見を活かし、同年に発生した阪神・淡路大震災で、被災者のための「紙のログハウス」や「紙の教会」を建設。この技術は、現在も世界中の災害支援シェルターや仮設住宅に引き継がれています。 紙の家 https://shigerubanarchitects.com/ja/works/hh-ja/paper-house/ 紙の家、近くには「ダブルルーフの家」もありましたが、現在は、家具の家のみ現存しています。一方、2023年開館の下瀬美術館内の「Simose Art Garden Villa」で、全棟が復活しました。 🏠 宿泊予約 furniturehouse1.com 📍坂茂の初期作品「家具の家no.1」1日1組 Shigeru Ban's early masterpiece "Paper House" stood next to Furniture House No.1 until just a few years ago. (You can see the empty lot in the foreground of this photo.) Paper House was built with 110 massive recycled paper tubes—each 280mm in diameter, 15mm thick, and 2.7m long—arranged in an S-shape. Of these, only 10 support the weight of the roof. Another 80 resist seismic and wind loads, while the rest serve as screens to divide the interior space. After passing extensive strength and durability tests, the structure was officially certified by Japan's Minister of Construction (now the Minister of Land, Infrastructure, Transport and Tourism) as a permanent structural material. Issued under the special materials certification system of Article 38 of the Building Standards Act, this was the moment when "paper" was first publicly recognized as a building material in Japan. Drawing on the legal certification and architectural insights gained through Paper House, Shigeru Ban built Paper Log Houses and the Paper Church for survivors of the Great Hanshin-Awaji Earthquake that struck the same year. This technology continues to be applied in disaster relief shelters and temporary housing around the world today. Paper House https://shigerubanarchitects.com/works/hh/paper-house/ Paper House and the nearby "House of Double-Roof" no longer stand—Furniture House No.1 is the only one of these early works that remains in its original 📷 photo by @Martin_HOLTKAMP

別荘地について

この別荘地は、1960年代後半に開発されました。この地が特徴されるのは、当時日本を代表するクリエイターたちが、近代日本を代表する建築家や、後に世界的な評価を得る若き建築家達に、自身の別荘を創造的な実験の機会として設計を依頼し、さらには分野を超え互いに刺激し合うコミュニティを形成していたことでした。

しかし時が経つにつれ、これらの貴重な建築群は少しずつ姿を消し、それに伴い、その記憶や文化的価値もまた失われつつあります。この地の持つ豊かな物語と、それが日本のクリエイティブシーンに与えた影響を深く認識し、未来へと語り継いでいくことが私たちの願いです。

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